落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年11月1日日曜日

箱根山甘酒茶屋


江戸の頃もきっとこんなふうに見つめられていたのでしょう

今日の創作小咄#50
歌川広重 東海道五十三次 箱根 湖水図


 ↓ PLAYでは千一亭本当が「箱根山甘酒茶屋」でご機嫌を伺います


「ニコラス、
うっ、
腹いっぱいだぁ、
うっ」

「真之介、
団子ばかり
食い過ぎだぞ。
しかし、
なんとか、
最西海子(さいかち)坂も
橿木(かしのき)坂も
越えたのう、
そのうえ、
甘酒茶屋の団子は
うまかったし、
ここから先は 
石畳らしいから、
もう大丈夫だな。
次は関所の甘酒茶屋で
一服しようぞ」

「甘酒茶屋といえば、
ニコラス、
きいとったか、
茶屋の主人と
浪人者との話。」

「おう、なんだか、
詫び証文がどうとか
言ってたな
何の話かな、
真之介は聞いてたのか」

「ああ、
あの茶屋で春頃な、
呑んだくれたよっぱらい侍と、
馬子が
馬に乗れ、
乗らぬと
喧嘩になったが、
何を思ったか、
侍が両手をついて謝り、
詫び証文まで書いたというのだ、
さすがに、
聞いていた浪人者が、
『だらしのない奴、
拙者なら一刀両断にしてくれるわ、
そのような者、
さむらいではない、
にむらいだ』、
とか言っておった。
しかも
その侍の名が
『燗酒よかろう』
と言うからな、
ニコラス、
ふざけた奴ぞ」

「いやいや、
武士が馬子に土下座をするとは、
よほどのことがあったのだろうな」

「ん、
あ、
そうか、
わかった、
奴は。
厠に行きたくて、
我慢できなかったんだな」

「それは真之介だろ」

「こらこらこら、
二人とも、
少しは喋らないで歩け、
石畳とはいえ、
険しさに変わりないぞ、
そうだ、
こうゆうのはどうだ。
関所の傍の
甘酒茶屋に着くまで、
喋らないことにして、
そこまで喋らなかった者は、
喋った者の団子を食って
良いことにしょう。
よいな、
なんだその顔は、
真之介、ニコラス、
では
手を叩くのが
始めの合図だ。
いくぞ、せーの」

(パン)

「あ、
びっくりしたあ、
ご隠居、
いきなり、
顔の前で
手叩くから」

「あぁっ、
真之介、
喋ったな」

「えっ、
あ、
と言ってる
ご隠居だって、
今、喋りましたぞ」

「おっ、
あ、
しまった、
ということは、
団子はみんなニコラスか」

「やったあ、
これで団子は
みーんなオレのもんだ

あっ」

今日の創作都々逸#81

箱根湯本は おしのび湯本
今はいずこと しのばれる

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