落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年11月2日月曜日

箱根関所占い師

江戸の頃もきっとこんなふうに見つめられていたのでしょう

今日の創作小咄#51
葛飾北斎 富獄三十六景 相州箱根湖水


 ↓ PLAYでは千一亭本当が「箱根関所占い師」でご機嫌を伺います


「ご隠居、
腹減りました、
やっと関所です」

「そうだな真之介、
そこの茶屋で一休みしよう」

「おや、
ご隠居、
茶屋の前に、
占いが出ておりますぞ」

「うむ、
真之介、
向こう岸のあの大きな赤い鳥居こそ、
箱根大権現だ、
箱根は霊場なれば、
さぞかし占いも当たろう」

「さようで、
ニコラス、
ちょいと占って貰おうかな」

「なに、お花ちゃんのことだろ、
真之介」

「良いではないか、
おっ、占い師が手招きしておるぞ、
ちょうどいい、
あの、
あ、
ども、
い、
いえ、
結構です、
また来ます、

ご、
ご隠居」

「どうした真之介」

「あれは隠密です」

「なに、
どうしてわかった」

「だって、硯師ですよ、
元浪人の」

「なに、今度は
占い師に化けおったか。
うーん、
わからんな、
まこと隠密であろうな、
しかし、隠密にしては、
やることがわかりすぎる、
な、ニコラス」

「いえ、ご隠居、
そんな隠密は居まいと
思わせる作戦では」

「なるほど、やるな。
ここはひとつ、
真之介、
その方が行って、
化けの皮を剥いでこい」

「えっ、
またオレですか、
えーっ、
ニコラス、
その方も、
一緒に来い、
あ、
あの、
あなたは
先刻、小田原でお会いした
硯師さんではござらんか」

「えっ、
あっ、
は、はい、
そ、そうです」

「ん、
そうですだと、
やはり、
化けの皮剥がれたな、
隠密め」

「えっ、
ちょっ、
ちょっとまって下さい。
隠密なんてめっそうもない。
実は、
懐具合がさびしいよって、
硯師では金にならんので、
心得ある占いをやっております。」

「はぁ、
ニコラス、
どう思う」

「真之介、
そんなわけがないだろう」

「おふたり、
どうです、
好きなオナゴとの行く末など、
得意とするところです。
占ってしんぜましょうか」

「えっ、
行く末がわかるんですか」

「なんでもわかりますぞ」

「いゃ、
あ、
では、
少しだけお願いしたい」

「おいおい真之介」

「ご隠居には内緒ぞ、
ニコラス、
で、
どうすれば
良いので」

「そ、
そう、
占うには、
いくつかの質問に
正直に、
答えて貰わねばならない、
いいですか、
正直に、
答えないと、
オナゴとの行く末も、
どうなるかわかりません」

「あ、は、はい、
わかりました、
では、
どうぞ」

「ん、
では、
え、
その方はこれより、
いずこに行かれるかな」

「はい、京です」

「ん、
では、
え、
それは
何の為でござるな」

「えっ、
何の為と言われても、
な、ニコラス」

「ちょっと待て、
真之介、
えー、
さっきから聞いておれば、
占い師殿、
そのような目的など、
占い師ならば、
占えるはずでは。
占って頂きましょうか」

「えっ、
い、いや」

「なに、
占えぬと
言われるか」

「い、
いや、
もちろん、
占える、
ん、
では、
アジャラカモクレン
キュウライス
テケレッツノパ、
うむ、
なるほど、
出ました」

「なに、
な、
なんと出ました」

「その方に聞けと出ました」


今日の創作都々逸#82

占いが
好いた女に 袖振らせても
マ抜けちゃいない うらマない
        

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