落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年11月9日月曜日

見附宿天竜川の親子

江戸の頃もきっとこんなふうに見つめられていたのでしょう

今日の創作小咄#56
歌川広重 東海道五十三次 見附 天竜川 



↓ PLAYでは千一亭本当が「見附宿天竜川の親子」でご機嫌を伺います


「ご隠居、船はらくちんです。
あっという間ですな、
もう直ぐ着きますぞ。
みんな船使うから、
天竜川は船だらけですね」

「あー、
真之介、
この天竜川は
『あばれ天龍』とも言ってな、
流れが速いゆえ、船なのだぞ。
しかし、
どうもこの船というものは、
揺れるのがいかぬ、
おー、
船頭さんは、
ずいぶんと色白だが、
船頭になってから
日が浅いと見えるな」

「はぁ、
お客さん、
良くお分かりになりますな、
実は、
私の家は
この先、
見附宿の本陣でございまして、
ちょいと道楽が過ぎましてね、
勘当ということで、
なもので、
ここの親方のお世話で、
船頭にして貰いました。
日が浅いといいましても、
船遊びは
昨日今日じゃぁありませんで、
ですから大丈夫です」

「ああ、
しかし、
前から来る船は竿だが、
船頭さんは艪だね」

「ええ、竿は三年艪は三月
なんてなことを申しますが、
竿なんてものは
差すなんて言いましてね、
物騒なもんですが、
艪はこりゃぁ粋なもんで、
品のいいもんでございあす」

「おや、
どうしてまた、
品がいいんだい」

「ええ、艪の前にはまず
礼がきますでしょ」

「おお、船頭さん、
うまいな、
な、ニコラス」

「はあ、なるほど
れ、ろ、ですか、
ははは、
でも、さらにその前では、
ら、り、ってますが
大丈夫ですかね、
おっ、
あっ、
前から来る船に
乗っておる、
あれは、峠で会った親子では」

「ニコラス先生」

「おおー、
その後、具合はいかがです」

「おかげさまでもうすっかり」

「おー、そうですか、お帰りですか」

「はいそうです」

「おー、どちらまで行かれるので」

「この先、木曽まで参ります、
ニコラス先生はどちらまで行かれるので」

「あ、ええ、拙者もこの先の岸まで行きます」


今日の創作都々逸#87

髪を切ったの 気づかない
靴を替えたの 気づかない
鈍い奴だと 安心してりゃ
浮気して見りゃ 気づかれる

(アーアヤンナッチャッタアーアオドロイタ)

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