落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年11月13日金曜日

藤川宿棒鼻の幽霊

江戸の頃もきっとこんなふうに見つめられていたのでしょう 
『おはなちゃん』 


今日の創作小咄#59
歌川広重 東海道五十三次 藤川 棒鼻の図

 

↓ PLAYでは千一亭本当が「藤川宿棒鼻の幽霊」でご機嫌を伺います



「ご隠居、棒鼻が立っとります」

「おー、真之介、
やっと、
藤川宿だ、
棒鼻は入り口の標だからな。
おや、
饅頭屋が出ているぞ、
どれ、
たのもう、
三つくれ、
ん、
あと一つだと、
あー、
ぜひもない、
一つでいい、
ん、ん、
じゃ、
これを、
真之介、
二人で分けなさい」

「いえ、
ここは一つ、
ジャンケンで
勝った方が
食べるというのは、
どうだ、
ニコラス」

「おう、
その勝負、
受けて立つぞ真之介」

「よし、
じゃ、
最初はぐぅ、
ジャンケン、
勝った、
悪いなニコラス、
じゃあ、ご隠居、
いただきます」

「おやおや、
宿場に入れば
饅頭屋など
いくらもあるぞ。
あ、
そういえば、
この辺りは、
昔、
おいはぎに合った
娘の幽霊が
無念のあまり
出るところらしいぞ、
どうだ真之介、
幽霊は恐いだろ」

「えっ、
ご隠居、
異な事を、
幽霊など。
それにまだ日も高い、
幽霊は夜中に出るもの、
心配には及びません」

「いやいや、
ここの幽霊は
夜中には出ないそうだ」

「えっ、な、なぜです」

「それだ、
幽霊に会った奴が
聞いたそうだ。
なにゆえに、
夜中に出ないとな、
すると、
幽霊は言ったそうだ、
こんな寂しいところで、
夜中に出たんじゃ、
幽霊が出てきそうだ」

「ははは、
おやおや、
ちょこざいな幽霊じゃの、
片腹痛いというもの、
な、ニコラス
ん、ニコラス
どうした、
うおっ、
なんだよ、
そんな手つきして、
幽霊の真似か、
ニコラス」

「真之介、
うらやましぃ」


今日の創作都々逸#90

呼ばれた名前が オレじゃない
誰だそいつと 彼女に聞けば
そうなの聞こえた 時々聞くの
この部屋きっと 何か居る

(アーアヤンナッチャッタアーアオドロイタ)

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