シャンソンの女王 ~エディット・ピアフ物語~ | 吉田 進 | 作曲家・洗足学園音楽大学客員教授 |
放送大学ラジオ特別講義です。
以前、映画を見て感激したのですが、あらためてエディット・ピアフという情熱そのもののような人に魅せられます。その歌声に、全く理解できないフランス語なのに、身体の真ん中から震えが来ます。また、吉田進先生の語りが、見事に歌を引き立てます。もう、これは講義というより、作品です。繰り返し何度聞いても素晴らしい講義です。特に、「愛の賛歌」、そして「水に流して」はただただ込み上げてきます。そして、ドラマティックな曲が終わって、後にやってくる平穏に、素直に浸っている自分に気づき、余韻の、いや静寂の大切さを感じます。
もうすぐ12月がやってきます。毎年12月の独演会は「芝浜」です。「芝浜」ではその静寂を、平穏の有り難さをどう捉えるのか、どう表現するのか。
クリスマスはあらためて感謝を表す日と私は考えています。偶然にも「芝浜」もまた感謝が主題の落語です。
「あのとき私に自殺を思い止まらせたのはマルセルではなかったのでしょうか。ほんとうの勇気とは最後まで生き抜くことなのです。」自伝の中のエディット・ピアフの言葉には、奈落の底を舐めるような経験をも包み救うものがこの世にあることを教えています。
クリスマス、芝浜、エディット・ピアフ。 長くなってしまった暗く寒い夜の空でさえも、明るく暖かく照らしているようです。