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【 落語の雑則 58】 落語の平常心になる
かなり以前のことになるが
かわいい先輩が私をして
「トイレの100ワット」と
無駄に明るいってことで
笑いのネタにした
いゃあ
実に上手い
それは表現ばかりか
捉え方も秀逸で
なんとも
感心した
また一方で
少なからず
そんな先輩を
かわいく思えたのを
いまでもハッキリと
覚えている
だから
すこしも
引っかからず
不愉快に思うどろこか
ちょっと嬉しかった
なるほど
明るさは無駄かもしれないが
かわいさはけっして
無駄にならないという
思い出である
まあ
かように
私の平常心は概ね
明るくご機嫌である
それが
高座という楽しい場に
登れば
それはそれは
浮き立ってしまうのは
当然のこと
嬉しさと楽しさが
思わず顔に溢れ出てしまう
そんなままで
話し始めると
妙にご機嫌な登場人物ばかりが
出てきてしまうことになる
そして
落語が妙にご機嫌な落語家の
自己満足な話になってしまう
だいたい
落語の柱は登場人物の葛藤である
葛藤の表情は笑顔か
いやいや
だから
落語の平常心は
ご機嫌では無い
むしろ
悩みや
ふてくされ
不機嫌に近い
かといって
そんな心持ちでは
明るく楽しい落語を
作れやしない
落語の平常心と
自分の平常心との
釣り合いを感じなければ
高座に向かえば
落語家としての自分である
おじぎから
おじぎまで
落語家としての自分で語る
そんな落語を追求したい
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