今日の創作小咄#13
「ご隠居」
「めずらしいね若旦那
どうした」
「ふられたんで」
「おやおや、
なにがあった」
「そこに出来た
水茶屋の娘さ、
これがいい女、
一目惚れしちゃってさ、
思い切って、
直ぐソバに越しちゃった。
で、そのことを言ったんだ、
じゃ、一緒に住もうか
なんてことになるかと思ったら、
おこっちゃったんだ、
寝言は寝ながら言ってくれ
って言われてね」
「えっ、引っ越したのかい」
「まあ」
「おやおや、
つきあってたのか」
「いや、
3回店に行っただけ」
「じゃあ、
無理もないだろ、
馴染みでもないのに
越してこられたら、
それゃ嫌われるよ。
いいこと
教えよう。
そいつは、
順番が逆だな。」
「逆って」
「そういうのはな、
まず、
それとなく、
女の住んでる町を聞くな、
女が教えてくれりゃぁ
それでいいんだが、
これがなかなか
教えてくれない、
ま、そうゆう娘のほうが
いい娘ってもんだ。
そしたら、
話は変わるが
おれは信心を欠かさないんだ
と言って、
ところでお寺さんはどこだい
とこう聞くな、
すると、
家を聞かれたんじゃないから
女は安心して
どこどこよ
なんてなことを言う
そしたら
すかさず、
おいおい、
そいつは偶然だ、
じゃ、お隣さんじゃないか
と言っといて、
さっさと
そこに
引っ越しちまえばいいんだ」
「へーっ、
なるほど、
わかりあした
じゃ、
さっそく、
どうも」
「あ、
これこれ」
「へへっ、
さすがご隠居だなあ、
言うこたあ現役はだしだ
よっぽど
若い頃
遊んでたんだなあ
おっと、
また新しい水茶屋だ
よしっ、
ここにしよう、
ごめんよ」
「いらっしゃいませ、
おせんと申します」
「おせんちゃんかい、
住まいはどこだい」
「それはヒミツです」
「あはは、
話は変わるが、
おれは信心を欠かさないんだ
ところで、
おせんちゃんの
お寺さんは
どこだい」
「新勝寺です」
「おいおい、
それは偶然だ、
じゃ、お隣さんじゃないか
オレの家は新勝寺の隣なんだ」
「あら、
そうなの
偶然ね、
近くなんだね
すると、
お前さんちは、
ずいぶん遠いんだねえ
これから帰るのかい
いいねえ」
「遠くない、
お隣だ、
直ぐ近くだろ」
「そうね、
直ぐ隣ね、
いいねえ
帰れて。
あたしなんかの脚じゃ
成田は遠いから、
めったに帰れないの
実家には」
今日の創作都々逸#43
♪
引っ越し挨拶 となりにいけば
仲良く引っ越し ソバで食う
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