今日の創作小咄#31
「こんにちは、
ご隠居さん」
「おや、
真之介、
久しぶりだね、
どうした」
「いえ、
今度、
ご隠居さんとこで
都々逸の会があると聞きまして」
「おお、
真之介もやるのかい、
そいつは
楽しみだな」
「ええ、
で、今日は
その手解きをしていただきたく、
参った次第で」
「いやいや、
それは
その時のお楽しみと言うことで
よいだろう、
まさか、
都々逸を知らないとか」
「い、いえ、
もちろん
心得てござります、
ただ、
このニコラスが、
なにぶんにも
オランダ人ゆえ
不案内でして
私ではいささか
なにでございますので
ここはひとつ
ご隠居に
御指南のほど
願いたく、
な、
ニコラス」
「えっ、
真之介、
そのほうが、
お花ちゃんの前で
かっこが」
「あーっ、
いえいえ、
お花ちゃんの前掛けに
都々逸を書いたら
かっこがいいと
ニコラスが言うもんですから」
「なるほど、
ニコラスは
都々逸は
知らないんだな」
「ま、まあ、
そうゆうことになりますか」
「そうか、
ではすぐに
都々逸を作るというのは
難しいからな、
どうだ、
まずは
都々逸をひとつ
憶えて、
それを披露するところから
はじめては」
「そうだよ
ニコラス、
そうしろ、
じゃ、ご隠居さん
お願いします」
「うむ、
ではな、
♪
どこが好きかと尋ねる人に
どこが嫌いと問い返す
どうかな」
「はぁ、
これはまた
いいですね、
な、ニコラス」
「ああ、
真之介もそう思うか」
「じゃ、二人とも
これを歌えるようになったら
また来なさい」
「はい、ありがとうございました
ほら、ニコラス」
「ああ、ありがとうございました
・・・
まったく
真之介が
付いてこいと言うから
付いてきたら
これだよ、
都々逸の会で
かっこいいとこ
見せたいのは解るが、
なにも
ご隠居さんに
聞きに行かなくてもよかろうが
おや、
向こうから来るのは
お花ちゃんのお母上じゃないか」
「あら、
まあ、お二人で
どうなさったの」
「今、真之介が
都々逸を習ってきまして」
「あら、いいわね、
真ちゃん、
歌って、歌って」
「ニコラス」
「いいじゃないか、
何事にも
稽古、稽古」
「よしっ、
では、
♪
どこが悪いんだと尋ねる人に
いいわきゃないだろと言い返す」
「あらら、
お二人、
喧嘩もするのね」
今日の創作都々逸#62
♪
口喧嘩
二人の気持ちに あるほど育つ
言の葉重なりゃ 肥になる
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