「夕陽を見るX氏」、別役実さんの短編だ。
何度も何度も読んで、いつか、落語のように、ソラで話せるようになってしまった作品。
20歳の頃だったと思う。夕陽で身体が真っ赤に染まっていくX氏を思って、その温かさに浸っていた。
今夜、とても好きな歌の一つ小室等さん(六文銭)の「雨が空から降れば」の作詞が別役さんだと知った。
友人が「シナリオ作家セミナー」に通っていたことから、一度だけ別役さんのお姿を拝見したことがある。不必要なモノを削ぎ落とした繊細な風貌、イイものだけで出来上がっている人といった佇まいだった。
「雨が空から降れば
オモイデは地面にしみこむ
雨がシトシト降れば
オモイデはシトシトにじむ」
別役さんは、そんな自分でいいと言う。
「しょうがない 雨の日はしょうがない
しょうがない 雨の日はしょうがない」
そう、ボクのオモイデも、けっこう雨で洗われている。
雨はオモイデから埃も汚れもシミまでも、すっかり洗い落として。
いつのまにか、ドロドロのボロボロだったオモイデさえも、
「想い出」になっている。
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