落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年9月28日月曜日

紳士の作法

今日の創作小咄#22

「ニコラス、話があるんだ」

「なんだい真之介、あらたまって」

「いや、他でもない、
お花ちゃんを今度できた
水茶屋に誘おうと思うんだか、
ついては、そのほうも、
一緒にいかがかと思ってな」

「ん、真之介はお花ちゃんを
好いておるのか」

「な、何を言う、
好いておるなどと、
口に出すなどは
武士の恥じゃ」

「あはは、
そんなことは
オランダでは
あたりまえ、
いや、
そうしないほうが
変人だぞ、
されば
真之介、お花ちゃんと
二人で水茶屋に行け」。

「いかん、
いきなり、
そのような、
二人で行くから
来いなどと、
そんなあつかましいことは
できぬわ」。

「そこがダメ。
ダメ。
行くから来いじゃダメ」。

「何がダメじゃ」。

「それが日本式なんだろうが、
日本式ではオナゴの心は
掴めぬぞ、
オランダ式は全く違うからな」。

「そんなに違うのか」。

「ああ違う、
オランダと日本とは
三千里も離れているんだからな」。

「なになに、
なんなんだ、
そのオランダ式ってのは、
教えてくれよ」

「教えてやらなくもない」

「なんだよ、
そうか、
わかったよ、
そうだ、
父上が
伊勢の檜の風呂桶に
替えたばかり、
それはいい香りだぞ、
湯を使ってかまわぬ故、
教えてくれ」。

「日本人は
なんでも男子が先だ、
座るのも立つのも
なんでもだ。

オランダ式は
なんでも
女子を先にする、
女子に決めさせる、
それが
紳士の作法
というものだ。

自慢じゃないが、
その点においても、
オランダは
西欧隣国より
進んでおる」。

「それはめんどうじゃ、
オナゴに決めさせてみろ、
やれ、となりがとか、
やれ、お向かいがとか
うるさくてかなわん、
オナゴになど任せてはおけん」。

「そこだ、今の日本は
そうゆう男ばかりだ、
その中で真之介だけが、
お花ちゃんのことを
第一に考えてやれば、
どうだ。
お花ちゃんにしてみれば
こんな嬉しいことはあるまい、
真之介様とか言って、
いちのコロに違いないぞ」

「なに、違いないか」

「ああ、違いない」

「なるほど、
オランダにも
一理あるな」

「いいや、
違う、
三千里ある」。


今日の創作都々逸#52

電話見つめて TELTEL坊主
明日は電話を しておくれ

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