落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年9月30日水曜日

十五夜の団子

今日の創作小咄#24

「ニコラス、
先に湯を使って悪いな、
そのうえ、
釜焚きまでさせちゃって」

「いいんだ真之介、
それより、
どうだった
お花ちゃんとは
うまくいったか」

「いいや、
お友達として、
なんて、
くぎ刺されちゃった、
へこんだなぁ」

「腹か」

「腹じゃないよ
へこんだってのは
気持ちが沈んだって事、
もう、
沈んじまって
沈んじまって」

「そりゃ、
まさに、
未練たらたら、
うかばれないってやつだな、
でもな、
気にするな、
オナゴはみな
気のない素振りを
するものだ、
これからだ、
真之介、
どうだ、
湯かげんは」

「ちょっと熱いな」

「そうだろ、
さっきから、
熱くしとるのだ」

「おいおい
ニコラス、
なんで熱くするんだよ」

「いや、
なに、
今日の昼、
お花ちゃんのお母上が
十五夜だとかで、
団子を作っておられてな、
拝見しとったのだが、
この、団子という物、
鍋に入れると、
すぐに沈んでしまうのだが、
鍋を熱くしていくと、
やおら浮き上がって
来るではないか、
だからな、
沈んでいる真之介が
浮かんでくるようにと
頑張って
薪をくべておる」

「ニコラス、
オレは団子じゃないぞ」

「なに、
お友達としてだなんて
くしを刺されるたあ、
団子の他にあるまい」

今日の創作都々逸#54

苦死をも一緒と 団子になれど
蜜だけなめらりゃ しらけます
   

0 件のコメント:

コメントを投稿