江戸の頃もきっとこんなふうに見つめられていたのでしょう
今日の創作小咄#49
歌川広重 東海道五十三次 平塚 縄手道
↓ PLAYでは千一亭本当が「平塚本陣」でご機嫌を伺います
「ご隠居、あれに見えるは
なんでござろう、
幕が張り巡らしております、
たいそう立派ですな」
「おお、真之介、
あれは平塚の本陣だ。
贅沢にも総ケヤキ造りだぞ。
本陣は御大名のお宿。
幕は投宿しておる印だ。
手前のは脇本陣といってな、
家臣らが泊まる所だ。
おや、幕の御紋は、
鶴之丸ではないか
鶴之丸とあらば、
三日月藩、森家であろうな」
「ご隠居、三日月藩とは」
「ん、三日月藩はな、
赤穂とは
竜野藩と並んで隣国になる、
参勤交代であろうが、
うーん、
それだけとは思えんな、
ん、
ニコラスどうした」
「いえ、今、
そこの脇本陣から
出てきました女二人、
あの後ろ姿は、もしや、
あれはお花ちゃんと
お母上ではあるまいか、
のぉ、真之介」
「うん、
似ているな、
しかし、まさか、
江戸にいるはずでは、
それに、
我らを追い越せば、
気付くはず、
他人であろう、
ね、ご隠居」
「いや、まさかと言うこともある。
真之介、声をかけてみろ」
「えっ、
またオレですか、
あ、
あー、
あのー、
そこのお二人」
「はい、
あっ、真之介様」
「お、お花ちゃん、
お母上、あーっ、
お元気で、よかったぁ。
心配しておりました。
しかし、また、なにゆえ、
どのようにして、
ここ平塚に」
「ええ、
母上様と一緒に、
飛脚船で参りました。
ここへは、
江戸留守居役の方々と共に、
春日神社の都々逸の会に
出ますの」
「そうなんだ、
へぇー、
飛脚船か、
それはいい、
ね、
ご隠居、
飛脚船で行きましょう」
「いや、真之介、
船は記録が残る、
我々は
人目を忍ぶ旅ゆえ、
船はいかん、
それに、
ワシは船に酔うタチだ」
「その上、ご隠居は
二日酔いと来てる」
「こら、真之介」
「へへっ、
昨日のご隠居を見せたかったなぁ、
なぁ、ニコラス」
「ああ、
もう、酔ったご隠居は
イノシシというよりも、
熊のようでありましたぞ。
どうなることかと
真之介と案じておりますれば、
いくつかアクビを
したかと思うと、
ぱたっと、
熊は冬眠しました」
「そして春が来たか、ニコラス」
「それはその方だろ真之介、
ところで、
御宿はどこでござる、お母上」
「ええ、
お宿はここなの、
脇本陣なんです、
あら、
もしや、
みなさん、
一緒に本陣ですか、
ニコラス」
「いいえ、オランダ人です」
今日の創作都々逸#80
♪
さしさされ
つづらつづらと お暑くなれば
そこのお宿で すずめましょう
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