-----
三遊亭圓窓
2009.7.1
千一亭
-----
商売となりますとぉ、
これがなかなか大変で
今ですとまずぅ
・
仕事をしようとなると
・
お金という
問題が
まっつぁきに
出てきますな
ぇ
資本がないことには
ぁーなにもできないという
わけなんですがぁ
・
ところがぁまぁ
落語ン中には
一文もなくとも
大もうけをしたってぇはなしが
ありましてぇ、ぁーあ、
えれぇことんなったなぁ
とうとうこうやって
てめぇの首うってぇ
あるくはめんなっちゃったよ
・
人間銭のねぇのは
首のねぇのにも劣るってぇけが
まったくだよ、
しょうがねぇ、
残ったのは
てめぇの首だけだ
・
この首うってぇ
なんとかしよぉ
・
といってもなあ
ただこぅやって
ぼんやりありぃてるだけじゃあ
・
何屋だか
わかってもらえねぇや
・
売り声だよ
・
なんだか
はずかしいなぁ
・
みっともねぇしねぇ
・
まぁ、
やんなくちゃいけねぇや
・
ぇーどうやりゃいいのかな
・
ぇぇっ、くくくび
くびやでござい
・
ぁーこんなちいさいこえじゃいけねぇんだ
もっとおおきいこえでなぁ
・
くぇっ、
・
なんだよ、
・
おれが
ひめいあげてちゃ
しょうがねぇな
・
ぉあー
だそう
ともうと
こえってぇのは
でてこねぇもんだなぁ
えーくくびっ、
くびぃやぁでぇござい
ぁー、
やの字入れると
あと、
つぅっと出てくんだな
これぇでだいじょ
♪くびやでござい
うめぇぞ
くびはいかがさま
くびやくびくび
くびやでござい
くびはいかがさま
できたての
くびでござい
・
ちょぉいとぉ
くりやさん
・
おっ
ありがてぇ
こぇがかかっ
えっ
どーも
ありがとう
ぞんじます
・
つぶはそろってんの
・
えー
まぁ
そろってますが
・
おおつぶもあるんでしょ
・
あー
おー
おおきいほうじゃ
ねぇんでござんすがねぇ
そろってることわぁ
たしかで
ござんすが
・
みずっぽくないんでしょ
・
ぇえー
ちいせぇうち
いどに
おっこったことが
ありますがねぇ
ぇー
それから
あんまり
ふやけて
ないから
だいじょうぶだと
おもうんですが
・
虫は食ってないでしょ
・
スッ、
できもんは
ありませんがね
・
あらいやだ
なんだい
できものてのは
あの
くりでしょ
・
いぇ
くびなんですが
・
くびぃ
あらいやだ
なんのくび
・
えー、
あっしの
くびなんでがす
えー
えー
こういうところを
ひとつ
え
よろしく、いやだねぇ
まぁ、きみがわるいね
そっち
いっとくれっ
・
あぁあ
おこられちゃった
・
そうだよなぁ
くびなんてぇなぁ
かうしと
いやしねぇや
・
あー
しょーがねぇーなぁ
シー
でもなぁ
だまってるわけに
いかねぇしねぇ
・
くびはいかがさま
・
くびやくびくび
・
くびはいかがさま
ちょいとぉ
あかんぼうが
寝たばっかりなんだよ
・
おおきなこえださないでおくれ
・
あー
こえがかかったな
とおもったら
こんどぁ
・
こごとだよ
・
おこられちゃったよ
・
おおきなこえ
だすなったって
こっちぁ
あきないじゃないか
・
だまってるわけにゃ
いかねぇんだよ
・
そぅだ
いくら
こうゆう
長屋
ぐるぐるまわって
おおきなこえ
張り上げたって
・
長屋の
かみさん連中
買ってくれねぇなぁ
・
くびなんてぇのは
いやだよなぁ
・
そうだ
りゃんこに
買ってもらおう
ね
おさむらいなら
度胸だってあるしね
ことによると
買ってくれるかもしれねぇ
よしっ
・
屋敷町まわろ、
・
くびやくびくび
くびはいかがさま
・
くびやにござい
・
おー、異なあきんどじゃのぉ
・
三太夫
三太夫おらぬか
・
あ
殿
お呼びでございますか
・
なにやら
窓下をな
くびやくびくびと
通行するものがある
・
まことの
くびやであるかあるいは
くりやの聞き違いであるか
・
ちと
つかまえて
問いただしてみよ
・
は
は
・
かしこまりました
・
で
くびやであったならばな
庭へ案内いたせ
・
ほれ
三日前に
新刀をもとめたのぅ
・
切れ味を
試してみるわ
・
はは
かしこまりました
・
あいや
そこの町人
・
ありがとう存じます
あっしのことですか
・
そのほう
今なんと申して
通行いたした
・
くびやくびくびと
申しましたんで
・
お耳触りでしたら
ごかんべん
ねがいますんで
・
いや
そうでわない
・
えー
くびや
・
なんのくびじゃ
・
ぇ
なんのくびっていいますがねぇ
あっしの
くびなんで
ごわす
・
そのほうの
・
くびか
・
しかと
さようか
・
ぇ
鹿じゃぁねぇんです
ぁの
ちゃんとした
人間なんです
・
それわぁわかっておる
ん
ことによると
殿が
お買い上げになるかもしれん
・
ぁ
こちらの
殿様がぁ
・
それがしに
付いてきなさい
・
ほぅですか
どぅ
も
ありがとう
存じます
・
いゃあ
・
けっこうな
お庭ですね
どうも
・
ひろいしねぇ
そうじ
たいへんでしょうねぇ
・
だまって
ついてくるのじゃ
・
ここにひかえておれ
・
殿
庭に
案内を
いたしましたが
・
おー
さようか
ん
・
・
そのほうが
くびやであるか
・
ぁ
どぅも
おはつにおめにかかりやす
よろしく
おたのもうしますんで
・
ん
そのほう
くびを
てばなすようじゃが
よが買い求めても
差し支えあるまいの
・
殿様に買っていただきゃあ
こんな
うれしいこたぁ
ござんせん
・
ん
首代金は
いかほどであるか
・
えー
えー
十両で
首が飛ぶ
よのなかでござんす
おまけもうしまして
・
七両二分
頂戴いたします
・
七両二分
おー
やすいのぅ
そのほう
首代金
いずれの者に
手渡すか
・
親か
兄弟か
・
いぇ
あっしが
貰っていきます
・
これこれ
うろたえるな
・
そのほうは
首を手放すのじゃ
七両二分は
親元へ届けるか
あるいは
親類の者へ
・
えー
あっしが
もらっていきたいんで
ござんす
えぇ
どうせあっしはねぇ
極楽へ行けるような
もんじゃ
ござんせんで
地獄にまわされると
思うんですがねぇ
・
三途の川ぁ
渡るんでも
銭がねぇことにゃ
乗せてくれませんでねぇ
・
ですから
七両二分
懐に入れて
あっしゃあ
いきますんで
・
おーー
三太夫
だいぶ
うろたえておる
・
不憫じゃ
ん
七両二分
手渡してやれ
・
どうじゃ
勘定いたせ
足りないと申しても
戻ってはこられんぞ
・
へぃ
確かに
七両二分
頂戴いたしました
・
懐へ
入れました
・
ん
さようか
しからば
買い求めるぞ
・
へい
よろしく
おたの
もうします
・
これっ!
支度をいたせ
・
ははぁっ
・
中間が
何人か出てきました
・
一人の
中間が
庭の真ん中へ
ムシロを敷きます
首屋が
その上に
座り込む
・
もうしとりの中間が
水をいっぱい張った
手桶を
持ってきます
三太夫さんが
新しい刀を
殿様に
手渡す
・
・
・
鞘ぁはらって
差し出しますと
三太夫さんが
柄杓に
水をくんで
ツバもとに掛けます
・
これが
すぅっっっっと
走る
・
帽子先から
ぽたり
・
・
ぽたり
・
首屋
そのほうの
首を
買い求める
・
なにか
言い残すことはないか
・
ぇ
この世に
未練は
ねぇつもりで
あきねぇに
へぇりましたが
そぉ
おっしゃって
いただきますと
甘えたくなりますんで
娑婆の見納めを
さしていただきとう
ぞんじます
・
むこうの
木戸を
つんとぉ
・
開け放って
いただければ
ありがたいんですが
・
ん
無理もなかろう
・
三太夫
木戸を
開けて
・
ん
首屋
見ろ
木戸
開いておるぞ
・
へぃ
・
・
・
へぃ
ありがとう
存じます
・
じゃぁ
殿様
・
十分に
お買い上げのほどを
・
度胸があるのぉ
ん
買い求める
よいか
・
・
・
ぇええーっ
首屋が
ひょいっと
体を躱します
傍らの
風呂敷包みから
張り子の首を
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
これこれこれこれ
これは張り子
その方の首じゃ
・
こらぁ
看板でござんす
0 件のコメント:
コメントを投稿