落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年10月13日火曜日

きれいな水

今日の創作小咄#36

「では、
真之介、
ニコラス、
お花ちゃん、
そして、お母上殿、
皆に季節に相応しい
兼題を用意いたした。
それは、
『もみじ』だ、
いや、まだ紅葉には
いささか早い故、
ここに、
つたない絵を用意しておいた、
色がなくて寂しいのだが」

「ご隠居様、色でしたらここに」

「おや、お花ちゃん、
絵の具をお持ちか」

「いえ、紅がございますので」

「なるほど、それはよい考え、
では早速、
どれ、
このままでは濃すぎるな、
ニコラス、
そこの、それを取ってくれないか」

「はい、ご隠居。
真之介、
この皿かな」

「そのようだが、
ニコラス、
皿と言い捨てるのは良くないぞ、
ここは作法の場なれば、
お皿と、『お』を付けて言うのだ」

「なるほど、
ご隠居、
この
お皿でござるか」

「ああ、それと、
この紅を溶くのに
きれいな水がいるな、
ニコラス、水を汲んできてくれ」

「はい。
なぁ、
どこから汲めばよいのだ真之介」

「ん、
ここはお屋敷だぞ、
へっついの横には
上水道が来ておる」

「そうか。
それでは
暫しお待ちくだされご隠居、
ただいま行ってまいります」

「何処に行くのだニコラス」

「はい、お水道で」

「それはいかん、
要るのは
きれいな水じゃ」

今日の創作都々逸#67

ゴツゴツ無骨な 頑固な岩も
水と流れりゃ 丸くなる
    

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