落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年10月16日金曜日

斎藤道三

今日の創作小咄#38

えー、あぶら、
えー、あぶらぁ
えー、あぶら、
えー、あぶらぁ

・・・

「おや、
ニコラス、
油屋の奴、
静かになったぞ」

「そうだな、
真之介、
あれは
誰かが叱っておるのだな
ちゃんと働けとな」

「油を売るな、
だろ、ニコラス」

「やるな、真之介。
あ、
ご隠居、
お客様はお帰りですか」

「いや、
そうではないのだ
ニコラス、
真之介も、
ちょいといいかな、
頑張って
都々逸を考えているところを
邪魔して悪いが、
力を貸してくれないか、
いや、
なに、
油屋が来たんで
求めたのだが
なにせ
重いのでな
台所まで
運んで貰えると
助かるのだ」

「はい、
ご隠居、
おやすいご用です、
な、真之介。
真之介は
こう見えても
力は人一倍ですから」

「それは
頼もしい、
二人とも、
こっちに来てくれ」

「おお、
油屋が油差しに
注いでおるぞ、
ん、
真之介、
あの棒はなんだ」

「棒、
あれは柄杓だ、
ニコラス」

「いや、
右手は柄杓だろうが、
左手に持つは、
銭に棒を付けた物かな、
ありゃあ、
いったい、
なにをしておる」

「ああ、
あれはな
油屋の作法だ」

「おかしな作法だな
真之介はその訳を知っておるのか」

「もちろんだ。
昔、
斎藤道三が
油屋の頃、
ああやって、
銭の穴に油を通し、
穴に少しでも油がついたら、
お代は要らぬと言って
売り歩いていたと言うのだ」

「それは
知らなかったな、
だが、
斎藤道三はたしか、
坊主、
油売り、
そして、
美濃の国盗り、
戦国大名となった
お方であろう、
立派なお方だ、
だが、
実の息子に
討たれたというから
可哀想だ」

長良川の戦いだな」


「それだ、
その戦いに
娘婿の織田信長が
駆けつけるも
及ばなかった。
道三討たれるの報を受け、
義理の息子の信長は
天に向かって
叫んだそうだぞ」

「どうさーん、
だろ、ニコラス」

「やるな真之介。

しかしな、
油売りから、
大名とは
いささか不思議な話、
そう思っておったが、
銭の穴に油を通すとは、
そのような逸話が残るくらいだ、
斎藤道三は
ただものではない、
流石の達人で
あったのだろうな、
ん、
だからか。
油売りは、
斎藤道三にあやかって、
油を注ぐのに
大事にしておるのだな
柄杓を」

「おや、
ニコラス、
間違ったな。
油を注ぐのに
大事にしてるのは
銭だ」

「いいや、
汲み取りだ」

今日の創作都々逸#69

男と女
水と油だ あわぬと言うな
鹸化重ねりゃ 溶けてゆく
       

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