落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2010年1月10日日曜日

ロマンスカー

最近、小田急のロマンスカーに良く乗るのですが、
夕方はどれも満席です。
本厚木までなので、これが、本厚木に停まるのが限られているためなのか、よけい混んでいるような気がします。

このあいだ、時間ぎりぎりでしたが、なんとか駆け込んで乗れたときのことです。
いつものように窓際の席のチケットを持って、1、2、3、4と番号を数えて席をさがしていきますと、その11番Aの席は背中を向いていました。
そうです、ロマンスカーは座席をクルッと回転させて4人掛けのパーティ席に出来るのです。
嫌な予感は的中しました。

そこには、11番Aの他の3つの席は全て、マダームがお座りだったのです。
滑るように列車は新宿を後にしました。
幸いにもまだ外は明るかったので、景色に目を落ち着かせておくことが出来ました、しばらくは。
しかし、気がつくと、中央にしつらえた小机の上には竹輪が出現していたのです。
竹輪ですよ。

しかも、私は何時もの癖で売店でプレミアム・モルツを購入済みです。
もうすぐ新百合ヶ丘です。
ここらで呑み始めないと、温くなってしまうばかりか、
本厚木に着くまでに呑み終えられないなんて事になったらと。
思い切って、いや、気持ちは思い切ってなんですが、
音のしないように、目立たないように、
細心の注意を払って開けたのです。

それは、ここでビールを開ける、
竹輪が前にある、
竹輪を薦められる、
「ところで」から始まる質問に答える、
すると「あら、いやだ」からの無限連鎖が核反応のように増殖する。
それは本厚木まで続く、
いや、最悪の事態として本厚木のホームから4名様として歩き始めてしまう。

そこまで考えなくとも、このビールが、いかに大変危険な物かは分かっていました。

ですから、もう、それは、
売店のおばちゃんが入れてくれた白い袋から
蓋の部分すらも見えないように、
指先に力が入っていることさえ悟られないように、
息づかいもゆっくりと、開けたのです。

「カチン」

オイオイオイオイ、「カチン」て言うなよ、
と思ったときには既に遅く、
3人のにこやかな笑顔がこっちを向いていました。

「竹輪いかがですか」
来ました。
あっという間もありません。

しかし、こんなときは、
取って置きの切り札があります。

「い、いや、けっこうです」
ちょっと咬んでしまいましたが、大丈夫。
絶句です。
完璧です。


やった、これで本厚木まで静かな旅になるはず、だったんです。
ところが、
なんと、
なんと敵はさらなる切り札を切ってきたのです。

「まあまあ、チクワ一時の恥よ、どうぞ」

それは、まだ新百合ヶ丘を出たばかりのことでした。

                                           

4 件のコメント:

  1. やった~!1000踏みました!
    これからも頑張ってくださいねっ。
    ニコラス待ってます。

    桃色仮面より

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  2. ありがとうございます。
    もっともっと踏んでいただけるように、
    頑張ります。
    ニコラスも真之介もご隠居も
    今か今かと出番を待っていますから。

    本当

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  3. チクワ
    いやぁ、情景が浮かんでくるようだよ。
    で、その後どうなったんだい?
    気になるねぇ~。

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  4. 父を送りました。
    いずれ笑って会えるから。

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