落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年10月19日月曜日

ご隠居の落雁

今日の創作小咄#41

「拙者は
ニコラスと
帰ります」

「真之介様、
気を付けて
では
母上様、
参りましょう」

「ああ、
後ろ姿も
見飽きないなあ、
ニコラス、
親子ってのは
後ろ姿がよく似るものだな」

「たしかに、
いいな真之介は
夢中になるものがあって」

「何を言うか、
ニコラスこそ、
重大な使命を帯びて、
これに勝るものはあるまい」

「それは、
真之介も同じぞ、
事の成否は
真之介次第とも言えるのだぞ」

「ああ、
ニコラスは
ケンペル先生愛弟子の蘭学医、
拙者はその通訳という訳だからな、
ニコラスはいいさ、
日本語を知らない振りを
すればよいのだから
こっちは、
オランダ語なぞ
さっぱり解らないのに、
解った振りして
しゃべらなきゃならんのだ」

「そうだな、
しかも、
大石殿一行が
幕府の密命により
釜山の倭館から、
オランダ船にて
帰国した使節
ということだが。
真之介、
これはちょいと
無理があるんじゃないか」

「いやいや、
それもニコラス次第、
事は国と国との戦に
なるやもしれず、
我が日本の命運が
かかっておる事として、
出島のオランダ軍艦の図面を
携えてという事だからな、
ニコラスが
それらしく演れば
上手くいく、
なにせ、
日本人は外人に弱いのだ
あっ、
ご隠居、
どうしました」

「ああ、
ニコラス、
そなたの皿の横に
我が輩の落雁を
置いておいたのだが、
知らぬかな」

「『通航一è???」

「ん、
オランダ語では解らん、
なんと申しておるのだ、
通訳してくれ、
真之介」

「菓子困りました」

今日の創作都々逸#72

子供なら
おかしいおかしい 疑る口は 
お菓子で塞げば 黙るのに
 

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