江戸の頃もきっとこんなふうに見つめられていたのでしょう
今日の創作小咄#64
歌川広重 東海道五十三次 水口名物干瓢
「ご隠居、あれは」
「おぅ、どうした、真之介」
「え、干瓢(かんぴょう)
売りにしては、
いささか勇ましきいでたちで」
「ん、
あの男か、
たしかに、
袴姿に襷がけ、
鞘払って構えしは
敵討ちか、
果し合いか、
の、真之介」
「いえ、あれは隠密では、
どうだ、ニコラス」
「たしかに、あれは隠密だ、
いよいよ、我らに挑む気だ、
油断するな、真之介、
あの正眼の構えは、
かなりのもの、
ですな、
ご隠居」
「うむ、できるな、
北辰一刀流だな、
油断するな、真之介」
「はい、たとえ、
北辰一刀流だと言えども、
こっちは三人です。
前後から掛かれば、
後ろは無防備、
必ずや勝ちます、
三人相手に、
一刀では太刀打ちできまいと。
おっ、も、もう一刀出たぞ、
ニコラス、あれは」
「うっ、われわれの声が
聞こえちゃったのでござろうか、
ご隠居」
「たしかに二刀流では
背後に死角が少なくなる、
隠密め、
考えたな、
うむ、
あの構えは、
宮本武蔵の二天一流に違いない、
油断するな、真之介」
「はい、たとえ、
二天一流と言えども、
こっちは三人です。
前後から掛かっておる隙に、
もう一太刀あびせれば、
必ずや勝ちます、
三人相手に、
二刀では太刀打ちできまいと。
おっ、も、もう一刀出たぞ、
ニコラス、あれは」
「うっ、われわれの声が
聞こえちゃったのでござろうか、
ご隠居」
「たしかに三刀用意しておけば
死角はない、
隠密め、
考えたな、
油断するな、真之介」
「あっ、
ま、また、一刀出しました」
「なに、四刀とな」
「あっ、
ま、また、一刀出しました、
五刀とは、
あ、なにか下を指さしておりますが、
あれは、
下に置いている笊(ざる)を
指さしておりますぞ、
何事かな、ニコラス」
「あれはきっと、
笊に金を入れろと言うことだろう、
また、金に困って、
隠密め、
今度は奇術師のつもりか、
油断するな、真之介」
「なにを、
ちょこざいな、
ニコラス、
負けられぬぞ、
我らもあっと、
驚かしてやるか」
「いいや、
隠密にゃ、
金はねぇや」
今日の創作都々逸#95
♪
(アーアヤンナッチャッタアーアオドロイタ)
彼女の好きな模様替え
テレビの場所がぐるぐる変わる
広くなったと自慢をするが
そこは先月あった場所
(アーアヤンナッチャッタアーアオドロイタ)