落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2010年5月9日日曜日

井戸の茶碗 2

井戸の茶碗の清兵衛さんは
正直です。
何に正直なのかと
整理してみると、

まず、
かわいそうと思った
千代田卜斎さんと
娘さんの助けになりたかった。
そして、
立派な心がけと思った
高木作左衛門の思いを
全うさせてあげたかった。
その自分の思いに正直なんです。

そこには清兵衛さん自身の、

「あたしなんぞに頭なんぞ
さげんでくだせえ」

「ボロ儲けは嫌いでして」

という在りようがあります。
自分はこれでいいんだという
強い自己が見えます。

「いいや、ちげえます、
そらちげえますで」

と侍に向かってきっぱりと
宣言できるのも
その在りようがあるからだと思います。

そこで思うのですが、
ではなぜ高木作左衛門に対面したときに

「いえ、高木様、それはご自身で
お持ちいだだきとう存じます」

と言わないのか、
売ったことに対しての責任感からなのか、

しかし、大金のこと、
屑屋さんにはその金に対して
それこそ何かあったときの責任を
とれないことは、
清兵衛さん本人がよく知っているはず。

思慮深い清兵衛さんの最善の選択は
おそらく

「では、おそれながら、
これより千代田卜斎様のところまで
ご案内させて頂きます」

ではあるまいか。
と思いは膨らみますね。

実にいいお話です。
人物それぞれの背景が
ぱぁーっと広がってきます。
その背景をいかに話から
感じ取って貰えるか、
それがこの話の楽しみだと
思っています。

夜も更けましたが
もう一回やってみますね。

0 件のコメント:

コメントを投稿