落語草 (千一亭志ん諒 落語ブログ)

2009年10月8日木曜日

都々逸指南

今日の創作小咄#31

「こんにちは、
ご隠居さん」

「おや、
真之介、
久しぶりだね、
どうした」

「いえ、
今度、
ご隠居さんとこで
都々逸の会があると聞きまして」

「おお、
真之介もやるのかい、
そいつは
楽しみだな」

「ええ、
で、今日は
その手解きをしていただきたく、
参った次第で」

「いやいや、
それは
その時のお楽しみと言うことで
よいだろう、
まさか、
都々逸を知らないとか」

「い、いえ、
もちろん
心得てござります、
ただ、
このニコラスが、
なにぶんにも
オランダ人ゆえ
不案内でして
私ではいささか
なにでございますので
ここはひとつ
ご隠居に
御指南のほど
願いたく、
な、
ニコラス」

「えっ、
真之介、
そのほうが、
お花ちゃんの前で
かっこが」

「あーっ、
いえいえ、
お花ちゃんの前掛けに
都々逸を書いたら
かっこがいいと
ニコラスが言うもんですから」

「なるほど、
ニコラスは
都々逸は
知らないんだな」

「ま、まあ、
そうゆうことになりますか」

「そうか、
ではすぐに
都々逸を作るというのは
難しいからな、
どうだ、
まずは
都々逸をひとつ
憶えて、
それを披露するところから
はじめては」

「そうだよ
ニコラス、
そうしろ、
じゃ、ご隠居さん
お願いします」

「うむ、
ではな、
♪
どこが好きかと尋ねる人に
どこが嫌いと問い返す
どうかな」

「はぁ、
これはまた
いいですね、
な、ニコラス」

「ああ、
真之介もそう思うか」

「じゃ、二人とも
これを歌えるようになったら
また来なさい」

「はい、ありがとうございました
ほら、ニコラス」

「ああ、ありがとうございました
・・・
まったく
真之介が
付いてこいと言うから
付いてきたら
これだよ、
都々逸の会で
かっこいいとこ
見せたいのは解るが、
なにも
ご隠居さんに
聞きに行かなくてもよかろうが
おや、
向こうから来るのは
お花ちゃんのお母上じゃないか」

「あら、
まあ、お二人で
どうなさったの」

「今、真之介が
都々逸を習ってきまして」

「あら、いいわね、
真ちゃん、
歌って、歌って」

「ニコラス」

「いいじゃないか、
何事にも
稽古、稽古」

「よしっ、
では、
♪
どこが悪いんだと尋ねる人に
いいわきゃないだろと言い返す」

「あらら、
お二人、
喧嘩もするのね」

今日の創作都々逸#62
♪
口喧嘩
二人の気持ちに あるほど育つ
言の葉重なりゃ 肥になる
   

2009年10月7日水曜日

台風の夜

今日の創作小咄#30

「ニコラス、
雨ばかりか、
風も強くなってきたぞ、
どうやら今夜は
野分(のわけ)
のようだな」

「そのようだな、
オランダでは
野分けのことを
Orkaanと言うんだ」

「へぇ、
べらんめえな職人が
巻き舌で
おっかぁって
呼んでるみたいだな」

「ああ、
日本に来て、
おっかぁって言うんだって
聞いたときには
おっかぁとは暴れん坊なのかと
ビックリしたぞ」

「またまたわかったよ
ネタだろ」

「ははは、
それはそうと、
都々逸の会があるそうだ、
お花ちゃんが行くそうだぞ、
真之介は行くのか」

「ああ、知ってる
行きたいのだが、
ご隠居の茶室だろ、
袴着用のこととあるが、
袴がないんだ、
ニコラスは持っておるのか」

「袴は持ってオランダ」

「またまたわかったよ、
ま、単衣でいくか」

「ダメだ真之介、
それじゃ、
お花ちゃんとの
恋は消えてしまうぞ」

「ん、なんだって、なに」

「袴ない恋になるぞ」

今日の創作都々逸#61
♪
大きな目だねと ほれたらまけよ
振り回されてりゃ 台風だ
   

2009年10月5日月曜日

十五夜の帰り

今日の創作小咄#29

「真之介、
いいお月見だったな、
こうやって、
歩いていると
江戸という所は
ほんとうに
いろんな
あきないが
あるんだな、
そういえば
お花ちゃんちの
あきないは何かな」

「うん、
お花ちゃんちは
いくつか長屋を持っててな
あきないと言えば
貸し家業ってことになるかな」

「なに、
貸し家なぞは
あきないではないぞ」

「えっ、
どうしてだ
ニコラス」

「そこに書いてあるぞ、
見てみろ、
真之介、
ほら、
あきあり
とな」


今日の創作都々逸#60
♪
おまえの家が
オレの家だと 誘いのせりふ
火がつき燃えりゃ 逃げ出され
   

2009年10月4日日曜日

十五夜

今日の創作小咄#28

「きれいなお月様ですこと、
お母様」

「そうね、お二人のおかげで
りっぱなお花見になったわね、
タイはお供えですから、
秋サバからいただきましょ、
こちらが塩焼き、
こちらが味噌煮込み、
ご遠慮なく
召し上がれ」

「はい、いただきます、
真之介、
どうじゃ、
自分で釣った魚の味は
格別だろう」

「いやいや、
これもニコラスが
駿足のおかげぞ」

「それほどの
こともないわ、
うん、美味い、
お花ちゃん、
塩加減が絶妙でござるの、
お花ちゃんは
お料理が上手だね」

「いえいえ、ニコラス様、
そんなことはありません、
お母様の言う通りにしたまでのこと、
格別のこともござりませぬ、
それより、
ご覧あそばせ、
格別は今夜の月でございますわ、
ほら、
はっきりと
ウサギの餅つきが見えますもの、
ニコラス様、オランダでも
ウサギといいますの」

「いや、オランダではロバというが、
日本ではウサギなんですね、
でも、お花ちゃんの白さは
ウサギなんかにゃかないませんよ、
しかし、ウサギというのは
なにゆえ、ウサギというのですかね」

「そうねえ、
お母様ならきっと知ってると思うわ、
ねぇお母様」

「えっ、
そうよ、
ウサギは
一羽二羽と数えるでしょ、
ウサギは
昔は鳥の仲間だったのよ、
だから、
ウサギは走るっていわないでしょ
ピョンピョン飛ぶっていうでしょ。
で白いでしょ
だからね、昔の人は
サギの仲間だと思ったのよ、
でも、捕まえてみたら
違うじゃない、
そこで、
これはサギじゃない、
嘘のサギだ
というので
ウサギになったのよ」

「へぇ、そうなの、
さすがお母様、
いかがです、
ニコラス様」

「うん、
お花ちゃん、
よくわかったよ、
でも、月のウサギだって、
ほんとは
休んだり
遊んだり
居眠りしたいのに
あんなふうに
まじめぶって
仕事してるのは、
なるほど、
ウサギは
嘘つきだからなんだね
お花ちゃん」

「あら、
ニコラス様
どうして
ウサギが嘘つきだなんて
お分かりなの」

「そりゃそうだよ、
お花ちゃん、
餅餅と書いて
ヘイヘイと読みます。
ですから、
下っ端役人のように、
月のウサギは
ヘイヘイと
いたしかたなく
やっておるのでしょう、
ね、お花ちゃん」

「まあ、
おもしろい、
ニコラス様は
漢字にお強くなられましたわね、
ねぇ、
ニコラス様って素敵よね、
真之介様もそう思うでしょ」

「いいや、漢字良くないと思う」


今日の創作都々逸#59
♪
うそとしり 
問い詰められずに 漢字で嘘は
口を塞げば 虚しさよ
  

2009年10月3日土曜日

師匠の誕生日

創作落語#1

筆を使って字を書く
というのは
最近ではさっぱりやりませんが、

小さい頃は
一人前に
お習字を習っていたことがあるんです。

小さい部屋でね、
先生と、何人かの
こどもが
行儀よく座ってるんですが、

この、
お習字というのは
書くのは楽しいんですが、
硯で墨を磨る、
これがめんどう、
退屈です。

そんなとき、
周りを見渡しますと、
難しい言葉が掛けてあったりしてね、

だいだいが
子供の興味を
そそるものはありませんが、

中に
なにやら
面白そうな
彫り物がある

これが
文鎮だったんです。

いや、
文鎮と言っても
我々が
半紙の押さえに使う
のと違って、
こう、
おっきな鉄のかたまりで
それが
人形のようになってるんです。

これはなんですかと先生に聞きましたら、
恵比寿様だそうで、

話は横道にそれますが、
恵比寿様ってのは
日本生まれなんですってね。
それで、
七福神の皆さんの
他の方はみなさん
外国生まれなんだそうですよ。
知りませんでした。

だからか、
外国の方には
日本人はことさら
気を遣います、

この10月は
各地の神様が
男女の縁結びを
相談するため
出雲に集るので、
いつもの場所は
神様が留守になります。
そこで神無月と呼ばれているんですが。

この時期、
他の神様に替わって
留守番して、
守って下さるのが
恵比寿さまです。

でもね、
ほんとは
みんなと一緒に
出雲に行きタイんです。
みんなと騒ぎタイんですね。

だから、
恵比寿様は
わらってるけど、
抱える魚は。
○○
ていうわけです。

この恵比寿様の文鎮が
大っきいのなんのって
子供だったからかもしれませんが
両手で持つのもやっとでしたね。

最近はそんな文鎮は、
ま、
たまに、
古い店先のレジで
伝票をおさえてたりしますが。
まず見かけることが
無くなりました。

見かけなくなったといえば、
この
筆で書く姿というのも
見かけなくなりました。

正月の書き初め
くらいでしょうかね、

まあ、
元旦は
おめでたく、
一年の始まりの儀式
ということなんですが、

ところが、
これが、
最近まで知らなかったんですが、

どうして
元旦がおめでたいかっていうと、

日本人全員が
一つ年をとる日、
つまり、
日本人全員の
誕生日だったんです。

赤ん坊は生まれたときに
一つ、そして、
お正月で二つというわけで、

昔の誕生日は
元旦だったんですね。
お腹の中にいた10月10日も
含めて生まれたときは1才なわけですが、

今、ふつうに
誕生日と言っているのは
明治35年の法律からです。

今の誕生日は
生まれて1年間は
0才だっていうんですから。
これは
もちろん
西洋的です。

ですから、
誕生日に
西洋の
ケーキを食べる
というのは
西洋の儀式なんだと
いうことなんですね、

そんな
誕生日のケーキを
買いに行ってます。

「おう、
源チャン、
源チャン、
なにシャッター
下ろしてるんだ
もう閉めるのかい
ちょっと待ってくれ」

「なんだい、
もう、
いい年なんだから、
おっきな声で
源チャンての
やめろよ」

「いいじゃねぇか、
ケーキ屋
源チャンだ
いいぞ
健ちゃんが
ちょいと
苦み走ってるってやつだな」

「あいかわらずだな、
熊さんは、
で、
どうしたんだい」

「どうしたじゃねぇ
ケーキ買いに来たんだ」

「熊さんがケーキ買うなんざ
珍しいね、
おや、
赤い顔して、
さては、
ごきげんだな
よっぱらってるだろ」

「ああ、
いまな、
師匠の家で
誕生会やってんだ
で、
ケーキがいるって
ことになってな
それじゃ
源チャンとこだってんで
来たんだ、
一つ売ってくれ」

「師匠って、
落語の師匠だろ、
オレ、
こないだ聞いたぞ、
師匠のピアノと一緒の落語、
よかったなぁ」

「そうだろ、
な、
みんな待ってるんだ、
早いとこ
一つ売ってくれ」

「売ってくれったって、
今日はもう売り切れだ、
見ろよ、
よく売れた、
一個もありゃしねえ、
だから
早じまいしてるんじゃないか」

「何言ってんだ、
オレがほしいのは
そんなちっちゃいのじゃないんだ、
誕生日のケーキ、
ほらほら、
こっちなあるじゃないか、
これだよこれ、
この一番大っきいの
これ一つくれ」。

「それはだめだ、
よく見ろ、
前に書いてあるだろ、
三日前までに
ご予約ください
ってさ、
だから無いんだ」

「なんだい、
ないんだったら
作りゃいいだろ、
急いでるんだ、
さっさと作ってくれ」

「おいおい、
そう簡単に作れないから、
予約してくださいってんだ。
熊さんの落語じゃないんだからな
そんな、簡単なもんじゃないんだ」

「簡単に見えるだろ、
落語なんてものは、
簡単に見えれば見えるほど
時間かかってるってもんなんだ
まったく、
ま、
いいや、
じゃ、
わかった、
こうしよう、
現物だからまけろなんてな、
電気屋でコタツ買うみたいなことは言わない、
な、
これ、
これを売ってくれ」

「だめだよ、
これは見本、
見た目はケーキだけど
中身は無いんだ、
空っぽ、
ボール紙のはこに
クリーム塗っただけの物、
ケーキに見えるけど
ケーキじゃないの」

「いいんだ、
師匠が、
ふーってやれればいいんだ、
だから、
ローソクもな、
ほら、
レジの横にあるやつ、
おや、
なんだい、
そのローソクが寄りかかってるのは」

「ん、
ああ、
こりゃ、
恵比寿様の文鎮だよ、
伝票押さえに使ってるんだ」。

「へぇ、珍しい物んだな、
そのローソクも一緒に売ってくれ」

「だから、これは見本なんだって、
売り物じゃないの」

「じゃ、貸してくれよ
な、
どうせもう
閉めるんだろ
だったら、
ここに置いておいたって
師匠んちにあったって
一緒だよ
明日の朝には
必ず返すからさ」

「だめだよ」

「なんでだめなんだ」

「そりゃそうだ、
こいつを持って行ってみろ
師匠はどっか行っちゃうぞ」

「なに、
どっか行くって
どこ行くんだ」

「そうさなあ、
ヨーロッパだな」

「なに馬鹿なこと言ってんだ、
こっちは急いでるんだ、
さっさと、
包めよ」

「まあ聞け、
いいか、
これを持ってここを出る、
すると、前は坂だ
坂の先には石段だ
こんな軽い物だぞ
その酔っぱらった脚で
ふらふら歩いててみろ
ふいとよろけて
落っことしちまうってもんだ
あわてもの」

「わかったから、
師匠はあれで
けっこう気が短いんだから
早くしてくれよ」

「まてって、
ここからだぞ、
石段の角に
タバコ屋がある
あそこには
今年はたちのお花がいるな
知ってるか」

「知ってるもなにも、
町一番のべっぴんだ。
音大でピアノやってるんだ」

「そうよ、
もうこの時間なら
帰って店番してるはずだ、
そこに
お前さんが
こいつを
ドサーっと落としてみろ、
あらたいへん
てなもんで
お花ぼうが飛び出してくるぞ」

「なに、おはなぼうが飛び出す」

「飛び出すだけじゃない、
大丈夫ですかてなもんだ、
思わず拾おうとするな、
お花ぼうの手がのびる
お前さんの手がのびる
思わず触れる
互いの手と手だ」。

「な、
なんだよ、
え、
それでどうなるんだ」

「お花ぼうは
慌てて飛び出したんだ
今時の子はたいてい
ミュールなんて
わけのわかんねぇ物を
はく、
これが慌てて履くと
小指がひもに引っかかって
奥まで入らないんだな
ただでさえ
ちっちゃいつっかけが
そんなんなってたら
もう、
よろよろだ
この箱をもつあげようとしたひにゃ
あーってなもんで、
また落としちまうわ
開けてみると
こんなクリームだらけなんだから、
ひっくりけえったら
そりゃあ、
ぐちゃぐちゃだ
あらー、
どうしましょってことになる
お花ぼうは責任を感じるな」

「えっ、そいつは
かわいそうだ」

「そうだよ、
お前さんは
いいやお花ちゃんのせいじゃない大丈夫、
なんてなことを言うだろ
色男」

「えっ、
そ、そりゃ言うよ、
で、どうなるんだ」

「そうなりゃ、
二人で師匠の家に
謝りに行くだろ」

「うんうん」

「すると師匠は
そんなことには頓着しない人だ
で、お前さんがお花ちゃんを
紹介するな、
すると、
師匠は
ピアノをひけるんなら、
これこれの曲はひけるかなと聞く、
はいひけますとなりゃ、
ピアノで落語ということになる、
お花ちゃんはびっくりするぞ、
で、卒業だ 」

「えっ、いきなり卒業か」

「そう、卒業するとどうすると思う
留学だよ、
ピアノで留学と言えば
ウィーンだ
ウィーンに行ったら
日本の話をするだろ、
当然、一緒に落語をやったという、
是非聞いてみたいと言うことになるな
では、と、お花ちゃんは
師匠に電話する、
お前さんがダメ元で言ったのに
誕生会に出てくれる人だよ、
そりゃあ、
行くわな
ヨーロッパに」

「おいおい、
ぼやっとして
聞いてたら
こんな時間だ
じょうだんじゃねぇ、
ちゃんちゃらおかしいや
ケーキが軽いからすっ飛んで
で、師匠もすっ飛ぶってか
じょうだんじゃねぇ
ささ、はえーとこ
つつんでくれ」

「え、どうだい、
心配になったろ」

「何いってんだい、
だれが
心配なんかするか
いいからはやく
包んで
く、だ、さ、い」

「はいはい、
わかったよ
じゃ、このローソクもだったな
これ、入れとこうか」

「あ、
いや、
そんな
ローソクだけじゃ
軽くていけねえ、
隣のその
でかい恵比寿様の文鎮を
ケーキの中に入れといてくれ」

今日の創作都々逸#58

忙しいのね 会えない訳は
年に一度の 誕生日
   

2009年10月2日金曜日

釣りの帰り

今日の創作小咄#27

「真之介、サバしか
釣れなかったのう」

「うん、サバで
お供えというわけにも
いくまいから、
タイを買ってきたと言っても
お花ちゃんだって
文句はないだろ、
しかも、
こんな立派なタイだぞ、
このタイは
オレが抱えるから、
ニコラスは
魚籠を持ってくれ」

「わかった、
真之介がタイで、
オレがサバだな、
よしっ、
じゃ、
お花ちゃんの家まで
競争だ」

「おいおい、
やめとけニコラス、
オレはこう見えても
早いぞ」

「なにを言うか、
オレは必ず勝てる」

「ずいぶんとな
自信だなニコラス」

「ああ、
お花ちゃんの母上が言っていた、
サバは脚が早いってな」

今日の創作都々逸#57
♪
サバを読まれて 煮詰まり焼いて
嫁にと食わされ 飽きたサバ
   

2009年10月1日木曜日

十五夜の釣り

今日の創作小咄#26

「やっと着いたな
真之介、
海は遠いなでっかいな、
だな
しかし、
十五夜に供える魚を釣ってこいたぁ
お花ちゃんも
人使い荒れえや」

「うん、
タイとかってことだろうな、
ニコラスは
タイとか
日本の魚は
知っとるのか」

「おお、
知ってらあ、
タイ
ヒラメ、

タコ
イカ
マグロ
ヒカリモノ」

「ヒカリモノは違うな、
さては、ニコラス
寿司屋で憶えたな」

「よくわかるな真之介、
おっ、
たくさん釣ってるな
こいつは釣れそうだ

すいません、
そこのお方、
どうですか、
釣れますか」

「おやおや、
つりなさるかね、
ここはつれるだよ、
ほうら、
ビクがいっぱいだ。
だけんど
サバばかりだがね
よかったら
隣で釣ったらええど」

「ありがとうぞんじます、
ふむ、
これがサバですか。
では
遠慮無く、
隣で釣らせていただきます。
真之介、支度はいいか」

「ああ、
これでよかろう、
餌をつけてっと、
それっ、

うーん、
海は波があるから
浮きがゆれるな

あっ、
沈んだ

おい、ニコラス、
浮きが沈んだぞ」

「掛かったんだ、
真之介、
早く引け」

「おおーっ、
ニコラス、
釣れたぞ、
釣れた、
ん、
だが
お供えには
ちょいと
こぶりだ」

「いいや、
サバだ」

今日の創作都々逸#56
♪
釣ったつもりが 餌食われれば
水の流れにゃ 魚はない
   

十五夜のススキ

今日の創作小咄#25

「あ、お花ちゃん」

「あら、真之介様、
どうしたの」

「いや、
お花ちゃんのお母上に
ことづかって、
これから
大川まで
ススキを採りに行くんだ」。

「十五夜のお支度ね」。

「うん、
お団子もできたし、
あとは
お魚と
ボクのススキと
花ちゃんの緋毛氈(ひもうせん)
だけだって」

「そうなの、
これがその緋毛氈なんだけど、
大川行くんだったら、
同じ事だから、
真之介様、
これも一緒に、
お洗濯していただくわ、
よろしくね、

はい、どうぞ、
それと、
これヌカ、
これで洗ってね」。

「えっ、
大川行くのは、
採りに行くんで、
洗濯に行くんじゃないんだ、
それは
お花ちゃん、
違うよ」。

「いいえ、
一緒です。
お洗濯したら、
ススキでしょ」。

今日の創作都々逸#55
♪
ススキならススキと 葉っ切り言えと
葉っぱをかけりゃ 手を切られ